【地域復興・カフェ】羽生裕二さん

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今回、お話を伺ったのは、浦戸諸島の島おこしプロジェクト「浦戸の花物語」を運営する羽生裕二さん。
浦戸諸島の資源であるハーブを活用した商品を開発、持続可能な産業を創出したいと思い、加工と販売の拠点として塩竈市内にカフェを開業しました。


羽生さんと浦戸を結びつけたものとは。

羽生さんが何故この仕事を始めたのか。


お話を伺ってみました。

 

まず、やり取りを始める前にお伝えしなければならないことがあります。

羽生さんは耳が不自由な方で、私たちの声はまったく聞こえません。

手話や筆談を介してのやり取り…かと思いきや、実はほとんどが私たちの唇の動きを読み取り、羽生さんにも声で答えてもらっています。

実は持ち込んだタブレットPCがうまく機能しなかったせいもあるのですが、7割くらいは声でのやり取り。

同音異義語や文脈に突然現れたような単語については筆談を利用しました。

 

ーカフェのオーナーであると同時にパン職人でもある羽生さん。むしろ、パン職人がカフェをオープンさせたという方がいいのかもしれませんけど、羽生さんは何故この塩竈でパン職人の道を選んだのですか?

(羽生さん)宮城に来たのは妻との出会い、結婚がきっかけだったのですが、浦戸に初めて行った時、いわゆる「本土」と比べて復興が遅れていることを知りまして、何か出来ないかなと思ったのが始まりです。

あとは、故郷の愛媛県(瀬戸内海)の雰囲気が浦戸と似ている、というのも後押しになりました。

 

パン職人については「パン職人なるぞ!」といってこの道を選んだわけじゃないです。食品ではない工場で働いたこともありましたし。

いろいろやってみて、この職業が向いていると思いました。そんなに器用でもないので、料理人のように何でもやれるわけじゃありませんので。

でも、パンは経験や勘のようなものをひとつひとつ積み重ねていくことが成果として表れる。

また、ほかの業種の人とも合いやすい、というのもメリットですね。

羽生さんのお店の内部

羽生さんのお店の内部

 

ーそれは、パンがそういう性格をもっている、ということですか?

つまり、たとえばイロイロな生産者、たとえば自分が手がけている浦戸の島おこしですが、浦戸でハーブを作ってもらい、それを生地に練り込んだパンを提供することができます。

パンを軸にして、いろいろな方々と繋がることが出来るというメリットがあります。

 

ー羽生さんは「○○パンを作りました」と調理パンの名前よりも「こういう酵母を使ったパンです」とアピールしますよね。その辺も関係ありますか?

あちこちにパン屋がありますから、何か特徴を出さないといけない、というのもあるんですけど(笑)。

これも、いろいろな酵母を使うことで、酵母の元になる農産物を使っている方々と繋がって、お互いの売り上げ増や雇用の創出へ続いて行けばいいなと思っています。

私がパンづくりを選んだのも、不器用な自分でも出来るから、ということもありますけど、雇用を作りやすい、ということが大きいですね。

極端にいえば、雇用を創出できるのであれば、パン職人にこだわる必要はないと思っているくらいです。

 

ーそれはまたすごい発言ですね(笑)。羽生さんと話をしていると、自分のことよりも、自分と関わる人々への関心であったり、どうにかしなくちゃいけない、という気持ちが強く表れている気がします。

パン職人であれば、ただ、パンを作って売ればいいわけですが、カフェをやっているのは、自分のようなハンデを持つ人だったり、難病を抱えている方、LGBT、外国の方など、いわゆるマイノリティの方々との壁を取り払って、お互いが理解するためのきっかけになる場所を提供したかったからです。

 

ー耳の聞こえない羽生さんが独立起業して、着実に歩んでいる姿を見てもらうことで、ポジティブな気持ちだったり、背中を押すことにつながるのは、良く分かる気がします。
羽生さん自身はどんな人を雇用したいのだろうか。

自分がそうだからなのですが、耳が不自由な人を雇いたいと思っています。特に耳が不自由だから自分の殻に閉じこもっている人、そうせざるを得ずに生きてきた人に「誰かと話すことは難しくないよ」「聴こえなくても出来るんだよ」と言ってあげたいですし。

一生懸命話してくれる羽生さん

一生懸命話してくれる羽生さん

 

ーこれ、すごく刺さりますね。我々、健聴者が言うと「何も知らないで!」と怒られると思いますし、羽生さんをはじめ、耳の不自由な方の苦労は、どこまでいってもちゃんと理解することは出来ないから、なかなか言いづらい。羽生さんから発信することって、すごく意味があると思います。

耳が聴こえないことで、たとえば、聴こえる人とのコミュニケーションがうまく行かず、心を閉ざしてしまったり、トラウマになっている人も多いんですよ。

 

ー難聴者に限らず、マイノリティゆえのトラウマっていろいろあると思います。たとえば、ボクなんかは田舎者ですから、若い頃、東京に行って都会の人と話すと塩竈訛りのこともあって、疎外感だったり、卑屈になったりしたわけです。「何だ、そんなこと」と思われるかもしれないですけど、いったん、傷つくと、なかなかブレークスルーできない、目立たないように小さくなっちゃうのはすごく分かります。

自分も「100%大丈夫だよ」とは、簡単に言っちゃいけないとは思いますけど、全力で応援しますよ。

都会で思い出しましたけど、関東には、耳が不自由な方が起業している例が多いのですが、東北にはあまりないので、自分がそういうモデルケースになれたらいいな、とは思っています。

羽生さんのオリーブの木

羽生さんのカフェ店内にあるオリーブの木

 

ーちょっと意地悪な質問ですけど、もし、雇用をものすごく沢山つくれるビジネスを見つけたら、あるいは何かのきっかけでスタートアップできたら、どうしますか?

もちろん、やりたいですけど、いまはパン職人としての仕事にフォーカスしたいです。

ただ、事業が軌道に乗って、人を雇って、それこそスタッフに仕事を任せられるようになったら、耳が聴こえない人が通えるカルチャースクールを作りたいです。

結局、普通の学校に行っても働くための技術が身につけられないんですよ。

大学とかだと、手話通訳、ノートテイク(※筆記通訳とも。難聴者の耳として、話している人の言葉をはじめ、音に関する情報を伝える)がいるのですが、専門学校や私大だとまだまだ少ないですし。

筆記している羽生さん

時折筆記も交えての取材でした

 

ー最後に、羽生さんの宝物を教えて下さい。

オーブンですね。

クライウドファンディングで多くの支援を受けて導入しました。

これがなければ、お店は成り立ちません。

皆さんの励ましを具現化したものがオーブン。

いつも力を頂いています。

 

羽生さんの宝物「オーブン」

羽生さんの宝物「オーブン」

 

 

【まとめ】

ひょうひょうとした表情で語る羽生さんだが、パンづくりから販売、

カフェオーナーとして店に立つところまで全て独りで手掛けているため、昼夜を問わず働いているそう。

随分無理もしている、とのことだが、事業計画通り、年内中には人を雇うことが決定。

言葉の端々からは「誰かのために自分が出来ることは何か」という信念があふれている羽生さん。

羽生さんが咲かせる「花」がどんなものになるのか、これからも楽しみにしたい。

 

(執筆: 竹田)

 

ひと:羽生裕二さん
しごと:花薫る喫茶処 蕾・浦戸の花プロジェクト
ところ:塩竈市海岸通4-1 プチパレビル
サイト:Facebookページ / ツイッター

 

【インタビューの様子】

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鈴木貴之編集長

投稿者プロフィール

「仙塩ひと・しごと図鑑」の編集長。

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